2007 Fiscal Year Annual Research Report
上皮-間細胞間クロストークによる放射線DNA損傷の軽減:新機構の解明
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19510058
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
VLADIMIR Saenko Nagasaki University, 大学院・医鹸学総合研究科, 助教 (30343346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 裕幸 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (80237635)
光武 範吏 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50404215)
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Keywords | 放射線障害 / 放射線防護 / 細胞培養 / 混合培養 / 傍分泌 / DNA損傷 / DNA損傷修復 / 急性効果 |
Research Abstract |
放射線の細胞応答を明らかにする時に注意すべき点は、臓器内組織は様々な種類の細胞から形成されていることである。すなわち組織レベルでの放射線応答は非常に複雑であり、個体の放射線影響を評価する場合、組織の複雑さを考慮する必要がある。そこで正常な上皮細胞と間葉細胞間の相互作用を反映する混合培養実験系を確立し、一方または双方における放射線誘発DNA損傷の変化について詳細な検討を行ない放射線障害と同時に防護のメカニズムを検討した。材料と方法は、ヒト初代培養甲状腺細胞(PT、正常上皮細胞)及び、ヒト正常線維芽細胞(BJ、間葉細胞)を使用した。PTとBJそれぞれの細胞を用いた条件培地を、標的細胞として別に準備したPTとBJ各々の細胞に与え、g-線を照射した。放射線誘発DNA損傷の程度は、細胞核あたりのγ-H2AXfoci数またはコメット法によって評価した。本年度の研究成果は、PT細胞では、PT細胞による条件培地に比べ、BJ細胞による条件培地を与えた場合に、放射線誘発DNA損傷が減少し、一方BJ細胞でも、放射線照射前にPT細胞による条件培地を与えることでDNAの損傷が減少するという新知見を見出したことである。すなわち、いずれの細胞においても、他方の細胞による条件培地により放射線誘発DNA損傷が減少し、傍分泌を介した防御メカニズムの存在が示唆された。また、条件培地を与えてからわずか数分後には、このDNA防御作用が効果を現すことも示された。一方、BJ細胞と上皮由来のがん細胞株との間では、この条件培地による放射線誘発DNA損傷の減少は認められなかった。 以上の研究成果は、正常な上皮細胞と間葉細胞の間には、放射線誘発DNA損傷を互いの傍分泌メカニズムにより防御、低減させる作用があることを示唆し、今後の放射線防護メカニズムを検討するうえで貴重な所見と考えられた。更に本研究を発展させることで新たな放射線防護薬剤の開発につながると予想される。
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Research Products
(12 results)