2009 Fiscal Year Annual Research Report
モデル実験生態系を用いた放射線と化学物質の環境影響の比較評価
Project/Area Number |
19510063
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
府馬 正一 National Institute of Radiological Sciences, 放射線防護研究センター, チームリーダー (40260236)
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Keywords | 放射線 / 化学物質 / 環境影響 / モデル実験生態系 / 培養時期 |
Research Abstract |
平成20年度に開始した、安定期のマイクロコズムにγ線を照射し、その影響を調べる実験を完了させた。照射後160日間の影響としては、100Gyでは繊毛虫Cyclidium glaucomaが死滅した。500Gyでは貧毛類Aeolosoma hemprichiと緑藻類Scenedesmus sp.が死滅し、緑藻類Chlorella sp.が対照よりも減少した。1000GyではC.glaucoma、A.hemprichi、Scenedesmus sp.が死滅し、Chlorella sp.が対照よりも減少した。5000GyではChlorella sp.と細菌が対照よりも減少し、藍藻類Tolypothrix sp.以外の生物5種は死滅した。また、全ての線量でTolypothrix sp.は対照よりも増加した。この実験結果より以下を考察した。 (1)照射および対照マイクロコズムの各構成生物種の個体数の差をユークリッド距離として全生物種について足し合わせた指数によって系全体に対する影響を数値化したところ、γ線5600Gyの影響は、ベンチオカーブ(除草剤)6.7mg/Lおよび直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS;合成界面活性剤)6.1mg/Lと同等であると評価できた。この比較結果は、水圏微生物生態系に対する放射線のリスク評価に役立つと考えられる。この成果は、原著論文として発表した。 (2)平成19年度に本研究で実施した、成長期のマイクロコズムに対するγ線の影響実験では、100Gyと500Gyでは死滅した生物種はなく、1000Gyでも2種が死滅しただけだった。従って、このマイクロコズムは、成長期(春を想定)と比べて安定期(夏を想定)では回復力が低く、放射線の影響を受けやすいと考えられる。従って、放射線の環境影響を評価する際には季節による違いも考慮すべきと考えられる。
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