2009 Fiscal Year Annual Research Report
メチル水銀は児脳における甲状腺ホルモン活性化を阻害し脳の発達を障害する?
Project/Area Number |
19510065
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 克己 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 教授 (90166942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 弘毅 東北大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (80301050)
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Keywords | メチル水銀 / 甲状腺ホルモン / 脱ヨード酵素 |
Research Abstract |
中枢神経毒性の強い環境汚染物質であるメチル水銀(MeHg)の毒性発現機序は十分明らかにされていない。われわれは最近MeHgが甲状腺ホルモンのプロホルモンであるT4を活性型ホルモンT3に変換する2型脱ヨード酵素(D2)活性を抑制することを明らかにしたが(Toxicol.Lett,161:96-101,2006)、このことからMeHgの中枢神経毒性発現に脳内T3濃度の減少が関与する可能性が示唆される。脳内T3濃度の維持にはT4やT3を活性のないrT3やT2に変換する3型脱ヨード酵素(D3)も重要な役割を演じている。そこで昨年度までの成果も踏まえ、本年度は脳内T3濃度の維持に関わるD2、D3の発現に及ぼすMeHgの影響を培養ラットアストロサイトを用いて遺伝子レベル、酵素タンパクレベルで検討した。SDラット胎児脳より得られたastrocyteを培養し、各種濃度のMeHgを培養液中に添加し、cAMPで誘導されるD2もしくはphorbol ester(TPA)で誘導されるD3遺伝子発現に及ぼすMeHgの影響を定量PCRで検討した。その結果MeHgはcAMPで誘導されるD2遺伝子発現を抑制するが、TPAにより誘導されるD3遺伝子発現には影響しないことが明らかになった。次にD2及びD3酵素活性に及ぼすMeHgの影響を検討した。酵素活性もcAMPないしTPAで誘導した。D3活性測定には乳癌由来細胞MCF-7を用いた。既存の報告のようにMeHgはD2酵素活性を阻害し、さらにD3活性も阻害した。以上のことより、MeHgは主として脱ヨード酵素の酵素活性を阻害することで脳内の甲状腺ホルモンレベルに影響を及ぼす可能性が示唆された。D2、D3ともにMeHgにより酵素活性が抑制されることが示されたが、このことで脳内の甲状腺ホルモンレベルがどう変化するかは今後の検討課題である。
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