2008 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染と紫外線の複合影響が近年の皮膚癌増加に及ぼす影響ーヒストン修飾との関連性
Project/Area Number |
19510071
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
伊吹 裕子 University of Shizuoka, 環境科学研究所, 准教授 (30236781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊岡 達士 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (40423842)
大浦 健 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (60315851)
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Keywords | ヒストン / リン酸化 / 複合影響 / ヒストンH2AX / ヒストンH3 / エピジェネティクス / 光 / 紫外線 |
Research Abstract |
環境汚染物質と太陽光(紫外線)の複合作用による発がん誘導の可能性の有無を、培養皮膚細胞を用いてヒストン修飾という観点から検討した。 1.多環芳香族炭化水素(PAHs)の光分解物によるヒストンH2AXのリン酸化 PAHsに擬似太陽光を照射した。その中で数種のPAHsの光産物がDNA二本鎖切断に伴うヒストンH2AXのリン酸化を誘導した。UVB領域に吸収をもつPAHs(phenanthrene等)はその光産物がH2AXのリン酸化を誘導するが、UVB領域に吸収をもたないPAHs(pyrene等)は誘導を示さなかったことから、太陽光中のUVB領域の光がヒストンりん酸化を誘導する化合物の生成に重要であることが明らかとなった。 2.PAHsの光分解物によるヒストンH3のリン酸化 1と同様のPAHsの光分解物は、ヒストンH3のリン酸化を誘導した。ヒストンH3のリン酸化はプロモーション活性を担うproto-oncogeneであるc-fosやc-junの誘導に関連しているので、PAHsの光分解物による発がん誘導の可能性を示唆していた。 3.PAHsの光分解物によるアポトーシスの阻害と発がん PAHsの光分解物はアポトーシスの誘導の阻害効果も有していた。アポトーシスは変異した細胞の除去機構として重要であるが、光分解物によりそれは阻害され、生存した細胞はがん化し、マウスにおいて腫瘍を形成した。 これまで、benzo[a]pyrene等のPAHsは代表的な発がん性物質とされてきたが、その発がんメカニズムは代謝体によるDNA付加体形成と考えられてきた。本研究結果は、太陽光(紫外線)は環境汚染物質を修飾、酸化することにより、より高い毒性、発がん性を有する化合物に変化する可能性があること、ヒストンの修飾変化、アポトーシスの阻害など、DNA付加体形成とは別のがん化を亢進する機構があることを示した。
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