2007 Fiscal Year Annual Research Report
環境発がん物質3-ニトロベンゾアントロンの新規核酸付加体の検出と生体影響評価
Project/Area Number |
19510073
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
高村 岳樹 Kanagawa Institute of Technology, 工学部, 准教授 (50342910)
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Keywords | DNA付加体 / 発がん物質 / 核酸合成 |
Research Abstract |
環境発がん物質である3-ニトロベンゾアントロン(NBA)のDNA付加体の解析を行った。NBAなどのニトロ化合物は生体に取り込まれるとニトロ基のヒドロキシアミンへの還元,さらに得られるヒドロキシアミンのO-アセチル化の代謝活性化を経てDNAを攻撃することが知られている。そこで,究極代謝活性体の合成(O-アセチルヒドロキシアミノベンゾアントロン)を行い,ヌクレオシドと反応を試みた。得られる付加物の推定構造を導き出し,別途合成法によりその構造の確認を行った。3-NBAの場合,デオキシグアノシンとデオキシアデノシンとデオキシアデノシンのアミノ基に3-NBAの2位の炭素が結合した付加体が得られることがわかった。また,これらの付加体はNBAを投与した細胞DNA中にも見いだせることがわかった。一方で,こうした付加体とは別の未知の付加体の存在も示唆された。この付加体はヌクレオチドと究極活性体の反応でのみ観察されるため,ヌクレオチドリン酸にNBAが付加したものと推定された。質量分析による解析もリン酸付加体の存在を示唆している。このリン酸付加体は別途合成により,構造決定を行うのが確実であるが,その合成は極めて困難であった。一般にリン酸基の修飾は,リン酸誘導体と水酸基のDCCを用いたカップリング反応で行うことができるが,同試薬ではNBAの誘導体の付加体を得ることはできなかった。リン酸部位がこのような比較的大きい発がん性物質に修飾されるという例はこれまでに,報告例がなく,その生体的意義については全く不明である。そのため,新たな合成方法を用いて,リン酸付加体を合成し,その生体活性について十分に検討する必要がある。
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