2007 Fiscal Year Annual Research Report
内分泌撹乱物質のビタミンDおよび骨Ca代謝に及ぼす影響と毒性発現メカニズムの解明
Project/Area Number |
19510075
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
西村 典子 National Institute for Environmental Studies, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (10097800)
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Keywords | ダイオキシン / ビタミンD代謝 / カルシウム輸送 / 骨形成阻害 |
Research Abstract |
ダイオキシンが活性型ビタミンD_3合成とカルシウム(Ca)の再吸収に影響するか、また骨の発育にどのように影響するかを生育段階の異なるマウスを用いて解析した。そのために母乳を介してダイオキシン曝露したマウス仔から生後7,14,21目において腎臓、小腸、副甲状腺、脛骨を採取して生化学的および組織学的検査を行った。また尿中のミネラル分析もあわせて行った。ダイオキシン曝露により尿中Caの有意な排泄増加が起きているにもかかわらず血清中のCa濃度は対照群との間に統計的差は認められなかった。腎臓内のCa再吸収に関与する遺伝子へのダイオキシンの影響を調べたところCalbindin-D_<29K>とNa^+/Ca^<2+>(NCX)の発現抑制が明らかとなった。Caの吸収を行っている他方の臓器である小腸においてはダイオキシンがCalbindin-D_<9K>、NCXの遺伝子の発現を有意に高めたことから、腎臓におけるCaの再吸収抑制効果が小腸の代償的作用によって血中Ca濃度が維持されていることが示唆された。ダイオキシンによる最も予期せぬ反応は腎臓内で活性型ビタミンD_3合成に関与するCYP27b1遺伝子がダイオキシンにより著名に誘導されたことであった。血中のビタミンD濃度もまたダイオキシンにより有意に上昇していた。次に骨に対するダイオキシンの影響を生化学的、組織学的に解析した。ダイオキシン曝露すると骨塩量、骨密度共に有意に低下した。骨形成の有力なマーカーであるアルカリフォスファターゼとオステオカルシンの遺伝子発現をダイオキシンが著しく抑制することが明らかとなった。類骨の特異的染色により、ダイオキシン曝露による海綿骨及び皮質骨での類骨の異常増殖をもたらすことが明らかとなった。骨の組織学的形態計測から、ダイオキシンによる骨の石灰化阻害が明らかとなった。本実験結果から、ダイオキシンによる骨の発育毒性は骨吸収の促進によるものでなく骨芽細胞の機能抑制による骨の石灰化の異常によって起こることが明らかとなった。
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Research Products
(8 results)