Research Abstract |
我々は,食用油,工業油,重油に分解活性を示す細菌Ud-4株を富山湾の漁港海水から単離した。本菌は,様々な種類の油汚染環境のバイオレメディエーションに利用できる可能性が考えられた。これを明らかにする目的で,菌種の同定や,組成の異なる3種類の培地を用いて各種油の分解率などを調べた。Ud-4は,透過型電子顕微鏡及び光学顕微鏡を用いた観察から,非運動性の短桿菌でグラム陰性であることが分かった。さらに,生化学的性状試験及び16SrDNA塩基配列解析の結果から,本菌はAcinetobacter属に分類されることが判明した。次に,5種類の食用油(キャノーラ油,オリーブ油,ごま油,大豆油,ラード)の分解率を,栄養価の高いLB培地,炭素源を含まないM9培地,そして海洋細菌用のNSW培地を用いて調べた。その結果,本菌は全ての食用油をいずれの培地においても分解し,3〜96%の範囲の分解率を示した。また,本菌は2種類の工業油(切削油:ユシローケン,ノリタケカット)も各培地で8〜71%分解した。さらに,C重油も各培地で7〜10%分解した。以上の結果より,Ud-4は5種類の食用油,2種類の工業油,重油など多様な油を分解できる能力を有することが分かった。特に,LB培地では他の培地に比べて菌がよく増殖し,多くの油種で分解率が高くなる傾向が見られた。また,M9培地を用いた実験から,本菌は各油を唯一の炭素源として利用し,増殖できることも分かった。一方,NSW培地を用いた実験から,本菌が海洋など高塩分濃度下の油汚染環境にも利用できると考えられた。これらのことから,Ud-4は様々な油汚染環境の修復に利用できる有用な微生物であることが示唆された。
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