Research Abstract |
我々が新規に単離し,食用油,工業油,重油に分解活性を示す細菌Ud-4株は,多様な油汚染環境のバイオレメディエーションに利用できる可能性が考えられる。本年度は,本菌について油分解能のキャラクタリゼーションをさらに進めた。まず,Ud-4の生育によるC重油中のn-アルカン成分の分解をガスクロマトグラフィーにより分析した。C重油を含む人工海水(ASW)培地にUd-4を接種したものと接種しないもの(コントロール)を準備し,25℃で4週間培養後に,残ったn-アルカン成分を調べた。その結果,C10-C25のn-アルカン成分がUd-4によりほぼ完全に分解されていた。これは,後述するように,本菌がアルカンモノオキシゲナーゼ遺伝子(alkM)を保有していたことと一致している。また,鉱物油と食用油を分解する細菌Ud-4について,それぞれの成分の異化経路を調べるために,既知の異化遺伝子の保有の有無をPCR法で調べた。本菌のリパーゼ遺伝子(lipA)については,前年度に塩基配列を決定しているが,本年度はAcinetobacter属のlipAを特異的に検出できるプライマーを設計して検出を試みた。その結果,本菌はn-アルカンの分解に関わるalkMとトリグリセリドの分解に関わるlipAでPCR陽性を示した。一方,alkB,alkB1,alkB2,xylE,ndoB,nidAについてはPCR陰性であった。シークエンス解析を行ったところ,alkMの増幅断片はAdnetobacter sp.M-1のalkMの塩基配列と85%の相同性を示し,lipAの増幅断片はAcinetobacter sp.SY-01のlipAの塩基配列と77%の相同性を示した。今後は,実際の油汚染土壌の浄化に本菌の適用を検討する予定である。
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