Research Abstract |
汽水域腐泥中に含まれている有機物質をアルカリ性pH環境下で分解した後,湖底の覆砂材として用い,環境修復を目指す手法の開発のため,研究初年度は高い有機物分解活性を示す好塩・好アルカリ性細菌のスクリーニングを行うと共に,選択された菌株の基本的性質の検討及び分類作業を行った。本研究では3%程度のNaClを含む腐泥に含まれる有機物を効率良く分解する微生物を分離することが重要なポイントとなるため,様々な地域で採取した土壌を分離源として用いた。具体的には島根県の中海の湖底から採取した腐泥,熊本県の住吉,網田,長浜及び松島マリンステーション付近の海岸で採取した土壌,兵庫県の神戸大学海事科学部付近の海岸及び沖合で採取した土壌,福島県の塩屋岬及び八崎の海岸で採集した土壌を分離源として用いた。3%のNaClを含むアルカリ性栄養培地を用いて菌の一次スクリーニングを行った結果,約7,200個のコロニーを純化することができた。その後,これらのコロニーを可溶性デンプン(1%w/v)またはスキムミルク(1%w/v)を添加した培地を使用して二次スクリーニングを行う事により,デンプン質及びタンパク質分解能を示す菌のスクリーニングを行った。この二次スクリーニングの結果553株を選別した。これらの株のうち,プロテアーゼのみの生産菌が317株,アミラーゼのみの生産菌が109株,両者を共に生産する菌は127株であった。いずれの株も3%NaClを含むアルカリ性pHの培地環境で良好な増殖能力を示す事から腐泥中の有機物分解の目的には十分使用可能であると考えられた。分離した大部分の菌株が好気性の性質を示すと共に,グラム染色では陽性を示し,また芽胞染色によって芽胞の確認をすることができたことから,多くの菌株がBacillus属に属する菌であると予想された。このことは数種の株の16S-rDNAの塩基配列からも確認された。
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