Research Abstract |
汽水域腐泥中に含まれている有機物質をアルカリ性pH環境下で分解した後,湖底の覆砂材として用い,環境修復を目指す手法の開発のため,本年度は1)汽水域から採取した腐泥の組成分析,2)酸化カルシウムの腐泥への最適添加量について及び,3)選択した菌を利用した腐泥中の有機物分解実験を行った。 中海湖底から採取した腐泥のpHは採取直後では約pH8であったが,大気中にさらされると徐々に酸性化した。CHNSコーダーを用い腐泥中に含まれる全炭素全窒素を測定したところ,平均で炭素量として3.5%,窒素量としては0.4%程度含まれていた。また,腐泥中に含まれる可溶性リン酸は約10μg/mlであった。採集した腐泥をpH10.5付近のアルカリ性pHにするために必要な酸化カルシウム添加量を測定したところ,約0.1%(w/w)であった。この酸化カルシウムの添加による腐泥のアルカリ性化により,腐泥中からの可溶性リンの溶出はほぼ完全に抑制された。アルカリ性化した腐泥中に,前年度選択した数種類の好塩好アルカリ性細菌を培養後添加し,菌の増殖測定を試みた。固相培養(水分含量の少ない腐泥を用いた菌の培養)では,腐泥中に含まれる水分を乾燥により低減した後に菌を接種し,酸化カルシウム添加腐泥中での微生物の増殖測定を微生物熱量計を用い,細菌の増殖に伴う発熱を測定することによって試みた。水分濃度の調節及び通気性の維持のために木材チップを添加するなどして培養を行ったが,含水量が多く,微小な温度変化を測定することはできなかった。今後は別の手法(生体染色等)を用い菌の増殖を観察する手法について検討する必要があると思われる。また,乾燥に伴う腐泥中の塩分濃度の増加及び,腐泥内部の通気性に問題があり,分離した菌の増殖には好環境とはならないと考えられたため,今後は水分濃度を上げ,旋回培養により腐泥中での菌の培養を試みるとともに,生体染色等を用い菌の増殖を観察する手法について検討する必要があると思われる。
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