Research Abstract |
昨年度の研究結果から,好アルカリ性細菌を添加した腐泥の培養は水分の多い液体培養とし,機器で攪拌することにより通気性を保ちつつ行った。予め培養しておいた4株の好アルカリ性細菌をスターターとして腐泥中に添加・培養を行い腐泥中に含まれる有機物濃度の変化を追跡した。一定期間おきに培養液の腐泥試料を採取し,CHNSコーダで炭素,窒素,硫黄の分析を行い,試料中に含まれる含量を比較検討した。対照としては腐泥に酸化カルシウムのみを添加して培養したもの及び,腐泥のみで培養を行ったものを用いた。なお,本研究では有機炭素量を有機物濃度の指標とした。その結果,全ての試料において有機炭素の減少を確認することができた。腐泥のみで培養した試料は,30日間の培養で有機炭素の減少は約3%と少なかったが,腐泥に酸化カルシウムを添加した試料では約16%減少していた。これらに対し,腐泥に酸化カルシウムを添加し,好アルカリ性細菌を添加して培養した試料では,最大で20%程度の有機炭素の減少が確認された。しかし,酸化カルシウムのみを添加した試料で得られた結果と大きな差は観察されなかった。また同時に行った窒素濃度も有機炭素とほぼ同じ割合で変化していた。さらに,硫黄濃度の追跡を行ったところ,全ての試料で1日目から3日目の間で急激な減少が観察された。 有機物分解試験を行った腐泥を埋め立てなどに使用する場合,重要な問題になるのが有害物質,特に重金属の溶出である。そこで腐泥からの溶出成分をICP発光分析によって分析したところ,酸化カルシウムを添加した試料からは砒素,カドミウム,鉛などの重金属の溶出は観察されなかった。しかし,腐泥のみの試料では鉄,亜鉛,マンガンの溶出が確認された。酸化カルシウムを添加した試料ではこれらの金属の溶出が抑制されていることが確認されたため,有機物分解を行った本試料を湖底への覆砂材料として使用するには問題はないものと考えられた。
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