2008 Fiscal Year Annual Research Report
固体核磁気共鳴シミュレーション解析法によるタンパク質結晶の水和構造の研究
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19510103
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
水野 元博 Kanazawa University, 物質化学系, 教授 (70251915)
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Keywords | 複合材料・物性 / タンパク質 / 物性実験 |
Research Abstract |
本研究の目的はタンパク質結晶中の様々な環境に存在する水和水のダイナミクスを自作の固体重水素NMRのシミュレーション解析法で詳細に解析し,タンパク質結晶の構造や物性と水和水の関係を解明することである。今年度は,固体重水素NMRのスペクトルやstimulated echoのシミュレーション解析法を開発し,広いダイナミックレンジで分子運動の情報を得ることを可能にした。この結果を欧文誌Journal of Physical Chemistry Aに発表した。また,異なる水和量の卵白リゾチーム結晶,アルブミン結晶,フェリチン結晶を調製し,重水素NMRのスピン-格子緩和時間(T_1),広幅スペクトル,QCPMGスペクトル,及びMASスペクトルの測定を行い,これらのタンパク質結晶中の水和水の環境およびダイナミクスを解析した。これらの結晶中には運動性の低い水分子と低温(200K付近)まで速い運動をしている水分子が存在することが確認された。200K以下では速い運動をしていた水分子の速度が急激に遅くなり,水分子の構造(H-O-H角)に分布が生じることが固体重水素NMRスペクトルのシミュレーション解析により明らかになった。卵白リゾチーム結晶やアルブミン結晶では200K付近でガラス転移が起こることが知られているが,この200K付近での水分子の運動の凍結はガラス転移と密接に関係していると予想される。これらの結果をJoint International Open Symposium for Molecular Science and Fluctuations toward Biological Functions(2009年3月岡崎)第2回分子科学討論会(2009年9月福岡),第89回日本化学会春季年会(2009年3月日本大学舟橋キャンパス)で発表した。
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Research Products
(9 results)