Research Abstract |
(1)フラロデンドロンの自己組織化と機能探索 フラーレンを焦点部位に持つデンドロン(フラロデンドロン)のLB膜を用いた有機薄膜トランジスタの作製に初めて成功した。デバイスは,n型トランジスタとしての性質を示した。興味深いことに,その電荷移動度を300Kにて比較したところ,スピンコート膜(1.4×10-3cm2V-1s-1)に比べてLB膜(2.7×10-3cm2V-1s-1)の方が2倍の値を有することが分かった。これは,LB膜にすることで,ナノ構造が制御され,導電パスが効率よく形成されたためと考えられる。《Applied Physics Letters,2007,91(24),243515/1-243515/3》 (2)デンドリマージスルフィドの光反応性探索 デンドリマージスルフィドの光機能性を明らかとすることを目的に,デンドリマージスルフィドの光照射下における反応性を種々検討する中で,アリルアルコールの酸化反応を新たに見出した。これは,光照射によって発生したSラジカルが,アルコールのアルファ位の水素引き抜くことにより開始する反応と考えられる。こうした反応が,デンドリマー型置換基を持つ場合に観察されることは,デンドリマー型置換基による活性部位の孤立化効果が大きく係わっていると言うことができ,デンドリマーの機能探索の面から非常に興味深い知見ということができる。《Bulletin of the Chemical Society of Japan,2008,81(3),361-368》 (3)CdS分子クラスターデンドリマーの合成 これまでに報告例のない,Cd10S16分子クラスターをコアに持つデンドリマーの合成に成功した。得られた分子クラスターデンドリマーは,有機溶媒に対する高い溶解性を有し,有機溶媒中で強い蛍光を発することから,新たな光機能性デンドリマーとして大変興味が持たれる。そこで,この新規分子クラスターデンドリマーについて,一重項酸素光増感剤としての機能を確認したところ,光酸素付加反応が観測された。こうした,光誘起エネルギー移動を介した一重項酸素光増感作用は,従来のCdSクラスターでは実現されておらず,分子クラスターまでサイズを制御したナノサイズ効果と,デンドリマー型置換基導入による安定化効果の2つの効果が,機能発現に有効であることが明らかとなった点は大変興味深い。《Chemical Communications,2008,(1),76-78》
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