2007 Fiscal Year Annual Research Report
固相と液相のナノサイズ複合化による赤外線応答性フォトクロミック材料の開発
Project/Area Number |
19510120
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
斉藤 光徳 Ryukoku University, 理工学部, 教授 (60205680)
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Keywords | フォトクロミズム / 多孔質マトリクス / 複合材料 / ナノ構造 / スピロピラン / 陽極酸化アルミナ |
Research Abstract |
代表的なフォトクロミック色素のひとつであるスピロベンゾピランを用いて、固体一液体複合材料を作製した。色素溶液を保持する多孔質マトリクスの材料として、陽極酸化アルミナ、極性および非極性のポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリカーボネイトを用いた。これらの素材には50〜200nmの微細孔があいており、この中にスピロベンゾピランのトルエン溶液を封入した。トルエン溶液は通常は無色透明であるが、紫外線(365nmの水銀ランプ)を照射するとフォトクロミック反応によって可視域に吸収ピークが現れ着色する。本研究の実験では、この溶液の色がマトリクスによって変わることが明らかになった。例えば、アルミナに封入した色素溶液は520nmに吸収ピークが現れて赤色を呈し、ポリカーボネイトの場合は580nmの吸収で紫色を呈するなど、孔に封入する前の溶液が600nmの吸収で青色を呈するのとは明らかに違った特性が見られた。また、通常の溶液は紫外線の照射を止めると5秒程度で着色状態から透明状態に戻る(熱的緩和)のに対し、アルミナの微細孔中では1時間以上も着色状態が保たれるという現象も見られた。実験の結果を分析すると、マトリクスの極性が強くなるほど吸収波長が短波長側に移動し、応答速度も遅くなる傾向が顕著に見られた。ポリカーボネイトでは50、100、200nmと孔の大きさが異なる試料で実験を行ったが、応答速度がやや遅くなる程度で、吸収波長には違いは見られなかった。このことから、微細孔中のフォトクロミック反応では、自由空間が狭くなることよりもマトリクスとの接触面積が増大することの方が大きく影響することが分かった。
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