Research Abstract |
今年度は,昨年度構築した理論の一般化および実務応用への適用について検討し,以下の課題に取り組んだ.(1)提案したヘッジ手法の有効性を示すため,株式インデックスを非流動性資産として,流動性の高い少数資産でヘッジする手法を構築した.(2)多数資産に支払いが依存する派生証券のヘッジ問題に対し加法モデルを適用することにより,個別資産のヘッジ問題に帰着する手法を提案した.(3)最小分散ヘッジの考え方をポートフォリオ最適化に適用することにより,共和分する資産の組み合わせに対するポートフォリオの最適化手法を構築し,その有効性を検証した. (1)については,まず実データから必要パラメータの推定を行い,株式インデックスを個別資産でヘッジする問題を定式化した.さらに,最小分散ヘッジ問題を解き,ヘッジ効果およびヘッジコスト比率の観点から提案手法の有効性を示した.ヘッジコストを算定するにあたっては,リスクの市場価格ノルム最小化によりリスク中立確率をもとめ,ヘッジに必要なコストを導出した.分析の結果,ヘッジに利用する資産を増やすことにより,ヘッジコストおよびヘッジ効果ともに改善されることが示された. (2)については,本来,多数資産を状態変数として同時に解くべき多変量オプションのヘッジ問題を,加法モデルを用いて分解することにより個別資産のヘッジ問題へと帰着させ,その有効性を示した.また,複数資産を同時取引するヘッジ手法と比べ,計算効率,およびヘッジ解像度の両面において効果があることを検証した. (3)については,分散最小化の考え方をポートフォリオ最適化に適用し,特に共和分する資産どうしの組み合わせによるポートフォリオの構築を試みた.共和分する資産は,定常性を満たすため,結果として得られるポートフォリオはより安定的で高い収益を達成するという見解を得た.また,取引コストやレバレッジについても検証し,往復取引コストが1%の場合でもシャープレシオの意味で十分実用可能性があることが示された.
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