Research Abstract |
本研究課題は,多次元かつ非線形の複雑なデータを視覚的に説明可能にするパターン認識技術の自己組織化マップ(Self-Organizing Map:SOM)のアルゴリズムを利用して,各気象場のパターン分類と気象揚間の相互関連性の抽出を行うことを目的としている. 平成20年度は,最初に,日本列島南側の海面温度を抽出し,台風の発生及び進路と強度を関連づけた.その結果,海面温度分布のパターンに対応する台風の発生域・進路・強度に大きな変化は認められず,異常気象や地球温暖化に繋がるシグナルを見つけることはできなかった. 次に,九州地方で過去の発生した豪雨を対象にして,その頻度や強度が過去28年間でどのように推移したのか調査した.その結果,最近10年で,短時間豪雨の頻度が増加する傾向が認められた.しかし,日雨量レベルで見ると,30年間で大きな変化は認められなかった.また,個々の豪雨事例を見る限りでは,異常気象としての明瞭なシグナルは見られなかった. 以上の結果を踏まえ,複雑な気候特性を持っ日本列島とは別に,雨季と乾季が明瞭に区別できる気候特性を対象にして,異常気象や地球温暖化のシグナルが認められるかどうか確認するために,自己組織化マップ手法(SOM)を使って,南米中部の気候特性とその対象領域内に記録された100年間の水位データとの関連性を抽出した.その結果,1970年代を境に,気候指標が劇的に変化していることが判明した.それに伴い,渇水傾向から多雨傾向に変化するという興味深い結果も明らかになった.この結果は,比較的単純な気候特性を持った地域では,異常気象や地球温暖化のシグナルが明瞭に出やすいことを示唆している.
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