2007 Fiscal Year Annual Research Report
糖ヌクレオチド輸送体による器官形成制御の分子メカニズム
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19510205
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平岡 秀一 The Institute of Physical and Chemical Research, 免疫器官形成研究グループ, 研究員 (20291156)
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Keywords | 糖ヌクレオチド輸送体 / コンドロイチン硫酸 / 蝸牛様骨盤異形成症 / 器官形成 |
Research Abstract |
コンドロイチン硫酸(CS)やヘパラン硫酸(HS)は、ほ乳動物組織の主要な糖鎖成分であり、様々な器官の形成や機能の維持に重要な役割を果たしている。SLC35D1およびSLC35D2は、CSやHSの材料となる糖ヌクレオチドを、糖鎖の合成がおこるゴルジ体、小胞体内腔へ供給する。本研究では、生体内における糖鎖の役割を明らかにするため、SLC35D1とSLC35D2分子の欠損を人為的に誘導できる遺伝子操作マウスを利用し、糖鎖合成の低下によって異常が認められる器官の分析を行っている。本年度は、マウス交配により、分析に使うマウス系統の作製(Slc35d1のflox alleleマウスへSlc35d2遺伝子変異の導入、CREリコンビナーゼ発現系の導入)を行った。また、Slc35d1変異マウスについて、骨や脳、免疫細胞について分析した。その結果、骨形成において非常に重要な知見が得られた。骨は、軟骨細胞が分化することにより形成される。軟骨には非常に多くのCSが含まれているので、CSは軟骨機能に重要な役割を果たしていると推定されていた。しかし、実際にCS合成が欠損すると、どのような異常が生じるのか不明であった。骨形成に異常が生じるSlc35d1欠損マウスを解析したところ、CS合成の著しい低下によって、軟骨成長板増殖層の細胞外マトリクスが顕著に縮退し、骨の形成が低下していることが判明した。さらに、Slc35d1欠損マウスの異常に類似する疾患があるか否か検討したところ、ヒト骨系統疾患である蝸牛様骨盤異形成症が、SLC35D1遺伝子の欠損によってひき起こされることが明らかになった。以上の知見は、蝸牛様骨盤異形成症の診断や治療法の開発に応用が可能であるばかりでなく、CS鎖の異常が原因と推察されている他の骨・関節疾患の治療法の開発に結びつく可能性が考えれる。
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Research Products
(4 results)