2007 Fiscal Year Annual Research Report
ドメイン間相互作用に基づいた可溶性グアニル酸シクラーゼのシグナル識別機構の解析
Project/Area Number |
19510224
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
牧野 龍 Rikkyo University, 理学部, 教授 (40101026)
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Keywords | 可溶性グアニル酸シクラーゼ / 一酸化窒素(NO) / ガス状シグナル分子 / ヘム鉄 |
Research Abstract |
可溶性グアニル酸シクラーゼは,生体内において多量の酸素が存在するにもかかわらず極微量の一酸化窒素(NO)を選択的に感知してNOシグナル伝達を可能にしている。このガス状シグナル分子識別機構の一端を明らかにする目的で,本酵素のβ鎖のN-末端ドメインに結合しているセンサー部位(ヘム鉄)の酸素結合能を解析した。得られた結果をまとめると,(1)酸素非存在下では,室温と77Kでの吸収スペクトルには差が見出されないが,酸素が存在すると,77Kで低スピン型のスペクトルに変換することから,酸素化型酵素の生成が示唆された。(2)酸素化型酵素の生成を確認するため,コバルトーポルフィリン置換酵素を作製して電子スピン共鳴法(EPR)により解析したところ,酵素に結合した酸素に由来するEPRシグナルが検出された。これらの結果は,凍結状態(77K)において酸素がヘム鉄に結合することを示している。それでは酸素化型酵素がシクラーゼ活性を示すのか否かという疑問が生じる。そこで,溶液状態で酸素化型酵素の検出を試みた。(3)不凍液を含む-7℃の系では,酸素の有無によりわずかな吸収スペクトル変化が見出され,その差スペクトルは77Kでの差スペクトルとほぼ一致した。また,酸素親和性が高いと予想されるデューテロヘム置換酵素では,天然型酵素より大きな差スペクトル変化が得られた。これらの結果は,-7℃の溶液状態においても酸素化型が生成することを示している。(4)-7℃で酵素活性を測定したところ,酸素の有無により活性に差は見出されなかった。以上の結果は,本酵素の還元型ヘム鉄は高スピン型であるにもかかわらず酸素に対する親和性が極めて低いことを示している。このように可溶性グアニル酸シクラーゼは,シグナル分子の結合過程ならびにシグナル分子による活性化のスウィッチングの両段階において酸素を識別し,NOによる選択的シグナル伝達を可能にしている。
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Research Products
(2 results)