2008 Fiscal Year Annual Research Report
ドメイン間相互作用に基づいた可溶性グアニル酸シクラーゼのシグナル識別機構の解析
Project/Area Number |
19510224
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
牧野 龍 Rikkyo University, 理学部, 教授 (40101026)
|
Keywords | 可溶性グアニル酸シクラーゼ / 一酸化窒素(NO) / ヘム鉄 / EXAFS / alky1 isocyanide / 酸素化型ヘム |
Research Abstract |
可溶性グアニル酸シクラーゼは、生体内において酸素が多量に存在するにもかかわらず極微量の一酸化窒素(NO)を選択的に感知する。しかし、酸素がセンサー部位であるヘム鉄に高い親和性を示さないのか、その理由は不明である。我々は昨年度、液体窒素温度下においては、酸素が結合した酵素(酸素化型酵素)が生成することを初めて見出した。今年度、酸素化型のヘム鉄配位構造をExtended X-ray Absorption Fine Structure(EXAFS)法で解析し以下の結果を得た。(1)還元型のヘム鉄はヘム面から0.5Aほど変位しているが、(2)酸素が結合するとヘム鉄はヘム面内に移行し、(3)ヘム鉄に結合した酸素の0-0結合はヘム面垂直方向から約140°屈曲して結合している。これらの結果ならびにヘム鉄と酸素間の結合距離は酸素化型ミオグロビンと大差なく、ヘム近傍のアミノ酸残基が結合酸素に立体障害を与えている可能性は低い。そこで、酸素より原子数が大きく嵩高い配位子であるalkyl isocyanideと本酵素の反応性を調べた。予想外なことに、炭素数4個のalkyl基をもつt-butyl isocyanideはミオグロビンに較べて10倍高い親和性と10倍速い結合速度を与えた。炭素数3個のalkyl基をもつisopropyl isocyanideではt-butyl isocyanideより体積が小さいにもかかわらずその親和性は減少する。このように、本酵素ではalkyl基の嵩高いほど(体積が大きいほど)親和性が増加し、ミオグロビンの結果とまったく逆である。これまでの結果に基づいて解釈すると、可溶性グアニル酸シクラーゼのヘムポケットは疎水性であり、その空間はミオグロビンより広いものと解釈される。したがって、本酵素の酸素に対する親和性が低いのは、結合部位周辺のアミノ酸残基による立体障害が原因ではない。
|