2009 Fiscal Year Annual Research Report
ドメイン間相互作用に基づいた可溶性グアニル酸シクラーゼのシグナル識別機構の解析
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19510224
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
牧野 龍 Rikkyo University, 理学部, 教授 (40101026)
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Keywords | 可溶性グアニル酸シクラーゼ / ヌクレオチド / 低分子シグナル分子 / ヘム鉄 / アジド / 5配位高スピン型 / YC-1 |
Research Abstract |
可溶性グアニル酸シクラーゼのN末端ドメインにはヘム結合部位が、C末端ドメインには2種類のヌクレオチド結合部位が存在することを我々は明らかにしてきた。今年度は、d-GMPあるいはYC-1の親和性を指標に両ドメイン間の相互作用を解析した。(1)ヘム鉄が還元型では、d-GMPはほとんどヌクレオチド部位に結合しないが、ヘム鉄に一酸化炭素(CO)が結合するとd-GMPの親和性は10倍以上高くなる。この結果から、N末端とC末端のドメイン間相互作用にはヘム鉄配位子の結合の重要性が示唆されるが、COの代わりにイソシアニッドが結合した酵素ではこのような親和性の上昇は見られない。これは、二つのドメイン間相互作用にはヘム鉄配位子とヘム周辺アミノ酸残基との相互作用の重要性を示唆する。(2)d-GMPがCO型酵素に結合すると、ヌクレオチド類似体であるYC-1の親和性が約3倍程度高くなる。YC-1の親和性の上昇は、CO伸縮振動の測定からも裏付けられた。これらの結果は、真性ヌクレオチド部位にd-GMPが結合すると、擬ヌクレオチド結合部位へのYC-1の親和性の増加をもたらすことを示しており、2種類のC末端ドメイン間にも相互作用が存在することが明らかになった。 これまで酸化型酵素の活性化は調べられていないが、アジドあるいはシアン酸が酸化型ヘム鉄に結合すると著しくシクラーゼ反応が活性化されることを見出した。これらの複合体の配位構造を赤外スペクトル、電子スピン共鳴法等により解析したところ、いずれの複合体も5配位高スピン型であった。また、これらの複合体の形成は、YC-1や基質GTPが結合すると容易に起こる。5配位高スピン型のアジド複合体の検出は、初めて報告であり、このように、酸化型においても二つのドメイン間相互作用が本酵素の活性化に重要であることが示された。
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