Research Abstract |
サシバ(Butastur indicus)は2006年12月環境省レッドデータブックにおいて絶滅危惧2類に分類された猛禽類の1種である. 近年, 本種のおもな生息地である谷津田では, 高齢化と過疎化や米価の下落等が進み, 耕作放棄が深刻化してきており, 本種の生息地減少が危ぶまれている. それを受け, 当研究室では, 岩手県花巻市において, 本種とその生息地となる谷津田の保全を目指して研究を行なっている. 本研究では, 本種の繁殖生態, 特に保全に不可欠な情報と考えられる育雛期の食性や食物資源量を明らかにすることを目的とした. 岩手県花巻市において, 本種の渡来前に2007年に本種の営巣を確認していた営巣木に小型CCDカメラを設置し, 2008年4月10日から6月30日までの81日間, 毎日午前4時から午後7時までの15時間ビデオ録画を行なった. ビデオ解析では, 親鳥の入出巣時間や運搬物の内容とその大きさ, 雛への給餌回数等を詳細に記録した. また, 給餌を確認した動物と同種のサンプルを採取, 重量と熱量を測定して食物資源量を算出した. この巣には3卵産卵され, 3羽の雛の巣立ちを確認した. 第1雛と第2雛の巣立ちは確認できたが, 第3雛の巣立ちは録画期間の6月30日以降であったため, 正確な巣立ち日を特定するにはいたらなかった. 観察を行なった37日間における雛3羽への給餌動物の運搬回数は1169回, うち両生類と爬虫類で86.0%(928回)を占めた. 食物資源量は湿重量が約13.8kg, 熱量が20,985kcalと推定され, 湿重量では85.6%が, 熱量では83.6%が両生類と爬虫類で占められた. 給餌回数, 湿重量, 熱量において, この両分類群が本県における本種の給餌動物として重要であることが明らかとなった.
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