2008 Fiscal Year Annual Research Report
ビルマにおける「民族医学」の確立をめぐる歴史人類学的研究
Project/Area Number |
19510246
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
土佐 桂子 Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 教授 (90283853)
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Keywords | 民族医学 / 文化人類学 / 公衆衛生 |
Research Abstract |
本研究は、民間治療に関わる、多様なタイプの医療従事者と知識・実践のなかから、ナショナルなレベルにおいて「民族医学」が、明確に制度化、公定化される過程を追いつつ、広範な知識・実践の何が取捨選択されていくかを明らかにすることを目的とし、以下の調査を行ってきた。 (1) 「民族医学」の制度的確立の把握。具体的には、現政権で発行された公的新聞紙といえる「ミャンマーの光」から、「民族医学」関連の記事を抽出し、項目等をデータベース化している。現政権における保健医療政策や民族医学関連の記述チェックを通じて、現在のところ、以下の点が明らかになった。第一に、現在「民族医学」を管轄する「厚生省民族医学局」を中心に、全国的に幅広く活動を行っていること。第二に、社説、論説などを通じて、一般の人々の慢性病を、民族医学の知識の側から論じるほか、病気に関する知識を広める努力が見られた。これらは、プライマリーケアの一環として民族医学を使い再構成していると捉えられ、WHOの方針との関連も指摘できる。 (2) 僧院を中心に、護符を含めた民族医学の伝授に関して調査を行った。ミャンマーにおける調査が困難であったため、具体的には、シンガポール、マレーシア等の僧院での聞き取り調査を行った。結果として、本国以上に公衆衛生政策が進んでおり、西洋医学もよりアクセスしやすい状況にあるにもかかわらず、ミャンマーから伝統医薬品を取り寄せたり、病気に僧院を訪れ、僧侶に相談したり、護符等をもらうといった実践が行われていることが分かった。 (3) 「民族医学」における諸科目の確立の把握正規の教育機関(民族医学大学・民族医学専門学校)における教育体制の歴史、教育内容、テキスト編成の過程。海外教育機関を訪問し、基本的な組織のあり方などを押さえた。
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