2007 Fiscal Year Annual Research Report
タイの地域医療・福祉におけるソーシャル・ガバナンスの形成
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19510250
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河森 正人 Osaka University, 人間科学研究科, 教授 (50324869)
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Keywords | 社会保障 / 社会福祉 / 医療保障 / 東南アジア / タイ |
Research Abstract |
近年、東アジアにおける少子高齢化と社会保障との関連においてコミュニティの重要性が強調されるようになってきているものの、これらは抽象的なモデルの提示の段階にとどまっていたり、中国、韓国、台湾など(狭義の)東アジア諸国に対象が限定されていることが多いとの視点に立ち、本研究では、近年のタイのコミュニティ・レベルにおける医療・福祉とりわけコミュニティ・ケアに関する具体的な取り組み、実践を明らかにした。これが本研究の意義である。 現地調査等を経て得た知見は以下のとおりである。タイのコミュニティ・ケア事業は、(1)内容的には、高齢者や障害者支援が「30 バーツ医療制度(UC)」の「コミュニティ内予防的サービス(PP Community)」の枠組のなかで、広い意味でのプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)と連携しながら実施する態勢を整えつつあり、(2)制度構築・運用面での主体間の分業に着目するならば、外形的な骨格を中央の国民健康保障事務局(NHSO)がつくる一方で、具体的なサービス内容および供給体制については地域社会が独自に構築し、さらに地域社会内部に着目すれば、保健所職員が全体の戦略的な部分とサービス供給における医療に近い部分において、また保健ボランティアおよび老人介護ボランティアが介護・福祉サービス供給において中核的役割を果たし、さらに婦人組織等住民組織や伝統医療師がボランティアを補完する体制となっていると考えられる。規模の小さい自治体ではいまだ保健担当部署が存在せず、保健所職員がスペシャリスト的な役割とジェネラリスト的な役割の双方を担う状況がしばらく続くとみられる。老人介護ボランティア事業が自治体事業として移管されつつあるが、将来的には保健所とともに保健ボランティア事業も一緒に自治体に移管されることも考えられる。そのようなことを考えれば、保健所職員のジェネラリスト的機能が今後さらに期待されると考えられる。
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Research Products
(3 results)