2008 Fiscal Year Annual Research Report
公共政策をめぐる政策ネットワークージェンダー平等政策に関わるNGOの日韓比較
Project/Area Number |
19510270
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土田 とも子 The University of Tokyo, 社会科学研究科, 助教 (70013018)
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Keywords | 公共政策 / 政策ネットワーク / NGO / ジェンダー / 日韓比較 |
Research Abstract |
平成20年度は、韓国における女性NGOや女性アクティビストが、政府との協働をめぐってどのような課題を抱えているか、今後の見通しはどうか、等について、主として関係者のインタビュー調査によって探求した。 韓国では、民主政府となったキム・ヨンサム政権、キム・デジュン政権、ノ・ムヒョン政権時に、NGOというリソースを政策の場に組み込むことが本格的に行われた。特に女性政策に関しては、アジェンダ・セッティングから法律案の作成まで、女性NGOが主導する例も稀ではなかった。ドメスティック・バイオレンス防止法はその一例であり、改正過程でも引き続き女性団体が重要なアクターである。 しかし女性団体内部では、そのような形で「制度圏」に入っていくことについて、議論や葛藤があった。ところがイ・ミョンバク保守政権になってから、それまで女性の人権関係機関の長として任務に就いていた、NGOリーダー格の女性や女性運動リーダーなどの幾人かはそのポストをおろされ、代わりに保守的な団体が、政策の場に組み込まれるようになった。女性の人権関係の運動を継続している団体によっては、多少とも反体制的な運動に参加したときは補助金を出さない、と言われるなど、強権にさらされているところもある。 女性運動の現段階については、経済発展がある程度のレベルに達してから育った若い人々が、民主化運動の経験を基盤に女性の地位向上の運動を展開する団体に参加せず、女性団体の世代交代が進まない状況がある。選挙の投票率もどんどん下がっている。だが若い世代が政治に無関心になったのではなく、別の手段による新しい運動を展開しており、依然として参加型の政治文化は存在する。自分が行動することによって政治や社会を変えることができるという、広い意味での政治的有効性感覚も強い。インターネットを駆使して多くの人々の参加を獲得した、牛肉の給食への導入反対運動などはその例である。 今後は、おそらくしばらくは続くであろう保守政権下で、女性団体の運動はどのような展望を持って進むのか、また韓国の民主化以来の特徴であった、政策形成・実施をめぐるNGOの力の大きさは、どのように変化するのか、あるいはしないのか、などについてが、研究課題となる。
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Research Products
(1 results)