2008 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア帝国南部辺境のムスリム統治機構と対外政策(1856-1914)
Project/Area Number |
19519001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長縄 宣博 Hokkaido University, スラブ研究センター, 准教授 (30451389)
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Keywords | イスラーム / 帝国 / 中央ユーラシア / 地域研究 / 東洋史 / ロシア史 / オスマン帝国 / 巡礼 |
Research Abstract |
本年度は、研究課題に関する国際的な研究協力体制を作り上げる上で、意義深かった。まず9月19、20日に、東大のイスラーム地域研究の支援も得て、ロシア連邦のカザンで、国際ワークショップを組織した。ヴォルガ・ウラル地域は、特に帝国、イスラーム、民族という問題群の重要な結節点の一つとして、地域間比較の格好の題材を提供してくれる。この研究集会には、日本、ロシア、アメリカ、ドイツ、トルコ、フランスから新進気鋭の若手とベテランの研究者を結集できた。なお、会議の論文集を出版予定である。 11月には、全米スラブ学会と中東学会で、コロンビア大学ハリマン研究所のポスドク研究員とニューヨーク大学の院生と共に、パネルを組織した。我々のパネルは、交通機関の発達によって世界が結ばれていく19世紀において、メッカ巡礼などを通じてムスリムが作り出すネットワークと、それを統御しようとする国家権力や諸国家の協働体制との相互関係を、未公刊の文書やムスリム自身の記録から明らかにしようとするものだった。 資料収集では、カザン国立大学で集めたタタール語史料が重要だった。本研究課題では、ムスリム社会内部の資本配分とロシア当局との相互関係を見るために、ワクフ(財産寄進制度)を重視しているが、特にこの点で収穫があった。ワクフ研究は、イスラーム地域研究上の最重要課題に数えられるが、ロシア帝政期のワクフ研究は、ようやく始まった段階にすぎない。最終年度の21年度には、帝国のムスリム諸地域のワクフの比較を行い、なおかつ問題の所在を他のイスラーム地域研究者にも提示するような論文を完成させたい。
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