2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 友幸 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40166723)
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Keywords | 言語行為 / 発語内行為 / 義務 / 選好 / 命題的コミットメント / 取り消し / 慣習的効果 / スコアキーピング |
Research Abstract |
本研究では、言語行為の論理的分析に際し、時間の流れを考慮したシステムの研究と、多様な種類の言語行為を扱うための研究を並行して行い、成果を段階的に統合することを計画した。このうち前者に関しては、本研究への応用を検討したHorty(2001)らのSTIT理論には、義務様相を組み込む際に義務の衝突を否定する公理が採用されているため、義務の衝突を生み出しうる指令行為の効果の分析に利用するためには、意味論そのものの根本的な変更が必要であることが平成20年度までの研究によりわかっている。平成21年度からは、この点でどのような変更が可能か研究を開始し、指令発令者に相対化した可能な歴史間の序列付けを導入する方法を取り上げ、平成22年度にはその序列の動的更新にvan Benthemらの選好序列操作の手法が応用可能であるとの感触を得た。後者に関しては、義務を生み出す指令行為や約束行為、聞き手の選好に影響を及ぼす発語媒介行為だけでなく、命題へのコミットメントを生み出す主張行為と譲歩行為も平成20年度までに扱えるようになっており、さらに主張や譲歩を取り消す行為の分析を開始した。平成21年度までに、主張と譲歩だけからなる発話列に対する取り消し行為が、信念改訂の理論で研究されている信念体系の縮小とは異なったふるまいを見せることが判明したが、同時に取り消し行為の効果は、それまでの討論、談話の経過に依存するため、非常に複雑微妙であることも明らかになった。平成22年度には、主張と譲歩だけでなく、それらの取り消しをも含むより一般的な発話列に対する更なる取り消しの効果を捉える拡張に成功した。この成果は、オランダで出版される論文集に掲載が決まっている。当該論文では、さらにこれらのシステムが言語ゲームのスコアキーピング関数の部分的特徴づけとみなしうることを明らかにし、統合のための視点を提案している。
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