2009 Fiscal Year Annual Research Report
ギリシア人の人間観への医学思想の影響をめぐる思想文化史的研究
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19520003
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
今井 正浩 Hirosaki University, 人文学部, 教授 (80281913)
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Keywords | ギリシア医学 / 人間観 / 身体(ソーマ)概念 / 魂(プシューケー)概念 / ヒポクラテス医学文書 |
Research Abstract |
本研究の課題は,ヒポクラテスに代表される前5世紀ギリシアの医学者たちの人間理解をギリシア人の人間理解の展開の中に位置づけることによって,その意義を広く思想文化史的観点に立って解明することにあった. 本研究の最終年度にあたる平成21年度においては,ヒポクラテス医学文書中の主要な医学書の議論内容の分析をとおして,医学者たちめ間で,身体(ソーマ)という概念がいかなる問題関心と要請にもとづいて成立していったのかという課題の検討を中心に,医学者たちの人間理解の特質を明らかにしていった. 医学者の人間理解の重要な特質の一つは,ヒポクラテス医学文書中の『神聖病論』『環境医学論』等の議論からも明らかなように,身体という概念がわたしたち人間の倫理的・社会的価値づけとは無関係であるような,いわば価値中立的な生理学的対象として提示されているという点にある.以上ののことは,そのような観点に立った価値づけの対象として,わたしたち人間の「魂」(プシューケー)というもめが,明確に概念化されていくための契機の一つとなっている. 本研究においては,この点を重要な思想史的事実の一つとして提示することによって,ギリシア人の人間理解の展開という問題を,哲学史や医学史を含めた,より広い思想文化史的文脈にそって問いなおすための新たな視座を提供するにいたった.
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