2007 Fiscal Year Annual Research Report
現象学における「理性」概念の変容-フッサールとレヴィナスに即して
Project/Area Number |
19520008
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
田口 茂 Yamagata University, 地域教育文化学部, 准教授 (50287950)
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Keywords | 理性 / 現象学 / フッサール / レヴィナス / 倫理 / 主体性 / 明証 / 懐疑論 |
Research Abstract |
1.フッサールの「理性」概念は、概念的思惟よりも直観としての「明証」に強く結びつけられている。今年度は、フッサールの明証論に関して、『論理学研究』から『イデーンI』に至る流れを押さえ、ケルン・フッサール文庫において未公開草稿の閲覧・分析も進めた結果、「理性の現象学」における明証の役割がかなりの程度明確化した。 2.レヴィナスに関しては、「理性」概念と、「主体性」概念および「懐疑論」との関係について検討と解釈を進め、さしあたりこれら二点に関する現時点での研究成果と研究の見通しを論文に纏め発表した。レヴィナスは、「主体性」そのものの核心に或る種の「覚醒」および「攪乱」を見ているが、この点の検討によって、この両概念が、彼の「理性」概念とどのように関わり合っているのかが具体的に明らかになった。また、フッサールの明証論・自我論(原自我論含む)と懐疑論との関係、ならびにレヴィナスの懐疑論と主体性論との関係を検討することにより、懐疑論の問題系を通して両者の「理性」概念の特異性を多少とも浮き彫りにすることができた。そこでは、理性を確立したものと見なすのではなく、理性そのものの根底を徹底して問い直すがゆえに、ある段階において懐疑論の問いかけを真面目に受け取る必要があったと考えられる(決して懐疑論的立場に安住しようとするものではない)。 3.両哲学者の「理性」概念を考究する中で明らかになってきたのは、両者の理性論が、人間的生の宗教的次元への問いと不可分に結びついているという点であった。両者の理性論は、現象学の「倫理的」な次元転換に関連しているが、フッサールにおいて、現象学の倫理的展開に際して宗教的問題意識が一つの背景を成していることがテキスト的にも伝記的にも確証されうるし、レヴィナスはこの点を、様々なテキストにおいて明確に論じている。今後の研究においては、この点の徹底した考察が必要となるであろう。
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Research Products
(4 results)