2008 Fiscal Year Annual Research Report
現象学における「理性」概念の変容-フッサールとレヴィナスに即して
Project/Area Number |
19520008
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
田口 茂 Yamagata University, 地域教育文化学部, 准教授 (50287950)
|
Keywords | 現象学 / 理性 / フッサール / レヴィナス / 明証 / 経験 / 宗教性 |
Research Abstract |
1. 前年度までに引き続き、フッサールにおける「理性」概念の形成と変遷について、ケルン・フッサール文庫における未公開草稿も含め、研究を進めた。20年度は、以下の点がとりわけ明確になった。すなわち、「明証」概念の深まりは、「自我」概念の深まりと軌を-にしているが、それは同時に、外部からもたらされた材料を主観的に加工するという経験概念が廃棄され、「経験」概念の現象学的再定義が行われてゆく過程でもある。後期のフッサールは、「明証」概念をはっきりと「経験」概念との関連のうちで捉えている。「斥けえないもの」の受容という経験の性格は、フッサール的な広義の明証概念と重なる。この連関が、フッサール的「理性」概念を直接に支えている。そして、この「理性」概念に対応する契機が、レヴィナスのテキストの内にも見出される。「顔」の概念は、一般的なイメージに反して、「明証」および「理性」というモチーフと強く関わることが、テキストに即して確認できた。以上の研究成果を、フッサール研究会国際シンポジウムにてドイツ語論文の形で発表することができた。2. 第二に、前年度の研究で明らかになった、現象学的「理性」概念と「宗教性」をめぐる問題系との関わりについて、現代哲学の諸テキストに即しながら、さらに研究を進めた。この方向では、レヴィナスとデリダの研究が中心になったが、J.L.マリオンのテキストも適宜参照した。また、西田・田辺らによる浄土思想の現代的解釈が、この点の研究にきわめて示唆的であったため、本研究によるレヴィナスやデリダらの議論の研究成果と関連づけながら、香港で開催された二つの国際学会で研究成果を発表した。これにより、各国の学会参加者から、肯定的な反応や有益な示唆を受け取ることができた。
|
Research Products
(3 results)