2007 Fiscal Year Annual Research Report
アリストテレスの「エネルゲイア」概念の形而大学における現代的意義の研究(II)
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19520013
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高橋 久一郎 Chiba University, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (60197134)
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Keywords | エネルゲイアenergeia / 性向hexis / 目的telos / 因果性causation / 規範性normativity / 価値value / 実在論realism / 付随性supervenlence |
Research Abstract |
本年度は,「アリストテレスの「エネルゲイア」概念の形而上学における現代的意義の研究(I)」として纏められた前期研究の確認と,アリストテレスの目的論の現代的意義の検討に向けての予備的研究を行った。 目的論が問題となる場面の一つである「行為」についての倫理的判断(の客観性)が自然科學的な世界理解の中にどのように納まりうるのかという,近年の倫理学の分野での重要なトピックについて検討した。その一部は、われわれが行う倫理的判断において、「善」と「正」という概念の果たす役割が異なること,つまり,前者が人間だけでなく生物一般についても適用される概念であるのに対して,後者は極めて人間のあり方に関するものであるということに着自するならば,少なくとも「善」については「進化論的世界理解」を認めれば,客観的であるだけでなく,われわれの認識とは独立した「実在」する世界のあり方についての記述的判断であると考える余地のあること,しかし,「正」については,客観的であるとしても,われわれと独立した世界のあり方についての記述とすることは困難であり,その身分については,さらに入念な検討の必要があることを,哲学会におけるシンポジウム「価値と実在」の提題で論じた。 また,同様の論点を,逆の角度から,今年度が最終年度であった21世紀COEの報告においで「正義」と「ケア」の関係についてオーソドックスな見解が主張する正義の優位性ではなく,少なくとも看護においては「正義」と「ケア」は「相補」的なものとして考えられる必要があると論じた。
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