2007 Fiscal Year Annual Research Report
シティズンシップの教育と倫理(ケアと責任の再定義を軸として)
Project/Area Number |
19520015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川本 隆史 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 教授 (40137758)
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Keywords | 市民性 / 教育 / 倫理 / ケア / 責任 |
Research Abstract |
グローバル化の進展と併行して、EUにおいてヨーロッパ・カウンシルが「シティズンシップの教育」の提言を行っているのをはじめ、アメリカ、イギリス、フランスなど多数の国々の教育省や教育研究機関において「シティズンシップの教育」のカリキュラム開発のフレームワークに関する研究が展開され、実践的な指針の提案が行われている。「シティズンシップの教育」は21世紀の学校教育の中核的な課題になっていると言っても過言ではない。その背景には、グローバル化による政治・経済の急激な変動と、地球環境の危機、局地戦争と文化や宗教の衝突、移民の拡大、人種差別や性差別による人権の危機、貧富の拡大や青少年犯罪の急増、公共的モラルの崩壊など、民主主義社会の根幹にわたる危機が横たわっている。 本研究はこうした「シティズンシップの教育」の展開を踏まえつつ、シティズンシップの《倫理》を究明することをねらいとする。その際に新基軸とするのが、市民の権利・義務や「公民的資質」の議論に終始しがちであったこれまで「シティズンシップの教育」の土俵を〈仲間の市民およびニーズを抱えている「見知らぬ他者」へのケアと責任〉にまで拡充するという作業である。 初年度にあたる平成19年度は、まず日本平和学会の部会での招聘講演(シティズンシップの教育と倫理-デモクラシー・市民根性・ケア)からスタートした。ついで文部科学省委嘱による「伝え合う力を養う調査研究事業」指定校である東広島市立高美が丘中学校に赴いて、同校の連携・協力員会議に出席したほか、10月26日に同校で開かれた教育研究会において講演を行った。これ以外もさまざまな機会を活用して、初等・中等教育の教員とも積極的な交流に努めたつもりである。こうした作業に基づいて、次年度以降の研究の基礎固めが完了した。なお幸い、2007年8月より中央教育審議会小学校・中学校社会専門部会委員を拝命し、本研究課題の成果を教育現場にフィードバックする回路を与えられた。このことを特に付記しておきたい。
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Research Products
(5 results)