2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本儒教に関する倫理学・倫理思想史的研究-近代化論と比較思想史的研究の統合
Project/Area Number |
19520016
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
高島 元洋 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (90127770)
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Keywords | 儒教 / 近代化 / 倫理学 / 倫理思想 / 特殊と普遍 / 山崎闇斎 / 全体論 / 朱子学 |
Research Abstract |
本研究は、日本を含め広く東アジアに共通する思想である儒教をとりあげ、イデオロギーのフィルターを排除して、以下のような問題設定から総合的に検討し、とりわけ日本儒教の倫理学・倫理思想史的な意義を学問的客観的に位置づけることを意図する。 i<比較思想史的研究:空間的考察>東アジア儒教思想における普遍と特殊の研究。それぞれの社会構造に対応する思想のありかたを解明する。この成果の一部は、2008年台湾国立政治大学におけるシンポジウム「日本の思想と文化」において「日本儒教の特徴」という題名で発表した。 ii<近代化論:時間的考察>近世・近代日本における儒教の位置。特に近代化においてどのように機能したかを解明する。その一環として、近世儒教の実態調査(主として上総道学の解明)を行なう。崎門研究の最大の問題は良質なテキストがないということであり、資料収集・翻刻・注釈という基礎作業が重要になる。われわれは、すでに定期的に上総道学研究会を設けて頻繁に研究を進めている。20年度は『墨水一滴』について作業を進め、同時に佐賀県多久・長崎県針尾・福岡県能古島などの藩校・漢学塾の調査をした。 iii<日本儒教の倫理学・倫理思想史的意義>日本儒教を、たんなる特殊としての倫理思想史とし位置づけるのではではなく、そこから普遍としての倫理学の課題を読み取らなくてはならない。これに関連する成果は「「思想史」とは何か-「日本倫理思想史」に関する方法論的反省」(『日本史学年次別論文集 2005(平成17)年』学術文献刊行会・朋文出版、2008年5月pp.494-487)において発表した。 ivその他 ブーレーズ・パスカル大学(フランス)の研究者Laurentiu ANDREI、Baptiste MELES、Emmanuel Cattin、Elisabeth Shwarttz氏などと相互交流し、ヨーロッパにおいて日本思想の関心がきわめて深いことを確認する。また、精華大学および法鼓仏教学院(台湾)のシンポジウムに招へいされたときは、中国において儒教についての研究が盛んに成りつつあることをしる。日本の近世・近代儒教を整理する段階に来ていることを確認する。各地の目録の整理、方法論の再検討が緊急の課題である。
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