2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520021
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
入江 幸男 Osaka University, 文学研究科, 教授 (70160075)
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Keywords | フィヒテ / 知識学 / ウィトゲンシュタイン / オースティン / アンスコム |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代英米の分析哲学の知見を組みいれることによって、ドイツ観念論とりわけフィヒテ哲学の再解釈をおこない、現代的な意義を解明することである。本年度は、具体的には次の二つの課題に取り組んだ。 (1)直観による知の基礎付け主義と決断主義との矛盾の解決 (2)フィヒテの後期知識学の再解釈 このうち(1)については、昨年度の国際フィヒテ協会大会(ドイツ・ハレ)での発表をさらに展開して、2007年6月に日本ディルタイ協会関西大会で発表した。その発表原稿は、私のHPで公開している。その後さらにその問題を考える中で、フィヒテの観念論を非常に純粋な徹底的な観念論として理解すべきであるということがわかり、その洋に理解すると、(2)の課題である、フィヒテの前期の知識学から後期の知識学への変化が、内在的なものとして理解可能になり、従来語られてきたフィヒテの変説問題についても、新しい明確な解釈を提出することができるようになった。それは『ディルタイ研究』に論文として掲載した。このような知識学の見直しと平行して、後期知識学や『意識の哲学』における「普遍的思考」が、現代の共有知論と類似性をもつことから、これを現代哲学や語用論との関係の中で読み直す試みをし、その成果を11月に日本フィヒテ協会大会の会長特別講演で発表した。これもまた、私のHPに公開している。その後は、英米の近年のドイツ観念論研究の動向を調べるべく、Rockmore, "Hegel, Idealism, Analytic Philosophy"を精読し、書評に取り組んでいる。また、当初予定していた、北米フィヒテ協会の大会が、今年度は開催されなかったので、夏に現代の分析哲学および論理学の知見とフィヒテ哲学を結び付けるべく、論理学と科学哲学の国際学会(北京)で発表を行い、意見交換をおこなった。 これらの研究の結果、フィヒテ哲学と言語行為論との関連付けに加えて、フィヒテの観念論と現代の反実在論を結びつけることを考えるようになった。
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