2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520021
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
入江 幸男 Osaka University, 文学研究科, 教授 (70160075)
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Keywords | フィヒテ / ダメット / 観念論 / 反実在論 / 知的直観 / 共有知 / ボンジャー / 基礎付け主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代英米の分析哲学の知見を組みいれることによって、ドイツ観念論とりわけフィヒテ哲学の再解釈をおこない、現代的な意義を解明することである。本年度は、具体的には次の三つの課題に取り組んだ。(1)前年度の続きで、アメリカにおける近年のドイツ観念論研究の状況を知るために、Rockmore, “Hegel, Idealism, Analytic Philosophy"を精読し、成果を書評にまとめて公表した。この作業を通じて、分析哲学の成果をフィヒテ研究に生かすというアプローチではなく、むしろフィヒテ研究を現代の分析哲学研究に生かすというアプローチの可能性に眼を開くことになり、研究態度の大幅な変更を意図するようになった。具体的には、フィヒテの観念論を現代の反実在論に結びつけて、その立場の擁護に利用するという方針である。(2)フィヒテの「普遍的思考」と現代の「共有知」の関連付け。後期フィヒテ哲学における「普遍的思考」ないし「我々」の議論を、現代哲学における「共有知」概念と結び付けて考察しようとした。この成果の一部は、ソウルで開催された第13回世界哲学会大会で研究発表に生かされている。そのときの質疑は大いに刺激になった。また一部は、「『意識の事実』(1810)における諸自我と普遍的思考」(『フィヒテ研究』第16号)として公表した。(3)次に行なったのは、知的直観と命題知の関係の解明である。フィヒテの観念論の基礎にあるのは、「知的直観」である。この概念と分析哲学の関連を調べる中で、現代アメリカの哲学者Bonjourが、「知的直観」とよく似た概念を提案していることがわかった。Bonjourの内在的基礎付け主義とDaumme ttの反実在論の関連を追及することで、分析哲学にフィヒテの観念論を生かすことができるという見通しを持つことができた。
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