2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520021
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
入江 幸男 Osaka University, 文学研究科, 教授 (70160075)
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Keywords | 内在主義的基礎付け主義 / Laurence Bonjour / 知的直観 / Michael Thompson / 共有知 / collective intentionality / John Searle |
Research Abstract |
今年度の計画のとおり、分析哲学の成果をフィヒテ研究に生かすというアプローチではなく、むしろフィヒテ研究を現代の分析哲学研究に生かすという方針のもとで、研究を実施した。 (1) フィヒテと現代分析哲学とりわけ内在主義的基礎付け主義との異同を明らかにし、それをもとにフィヒテ研究を現代の内在主義的基礎付主義に生かそうと試みた。Bonjourの知的直観による知の基礎付けは、フィヒテからの直接の影響によるものではないが、フィヒテの知的直観の議論とにており、それと同様の問題を抱えていることが明らかになった。この成果は、2009年6月に東北大学で開催された日本ヘーゲル学会シンポジウム「分析哲学とドイツ古典哲学」で発表した。この研究のなかで、基礎付け主義と意味の全体論は矛盾するにもかかわらず、ドイツ観念論ではその両方が主張されており、この点を解明する必要があることが分かった。 (2) 後期フィヒテの哲学は、現代の共有知論の先駆と見ることが出来るものである。共有知の存在証明は、理論的な困難を抱えているが、フィヒテは、道徳的関係の説明において共有知の想定が不可欠になることを論証使用した。この成果は、2009年10月にブリュッセルで開催された国際フィヒテ協会大会で発表した。フィヒテの議論は難解で、彼の共有知論が成功しているとは言えないが、道徳論の文脈で共有知を論じることは、Thompson(ピッツバーグ大)がすでに試みていることであり、両者の議論を付き合わせて、共有知論の存在証明を試みるという一つの研究方向が明らかになった。 (3) 今年度は、研究プログラムの最後の年にあたるので、『研究成果報告書』を冊子に取りまとめた、研究機関に配布し、HPにも掲載した。
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