2009 Fiscal Year Annual Research Report
集合的記憶を媒介とした世代間コミュニケーションに関する現象学的研究
Project/Area Number |
19520025
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
神谷 英二 Fukuoka Prefectural University, 人間社会学部, 准教授 (40316162)
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Keywords | 現象学 / 記憶 / 習慣 / 情感性 / 集合的記意 / 世代性 / 世代間倫理 / 世代間コミュニケーション |
Research Abstract |
前年度のヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論』における記憶論に関する研究成果を踏まえ、本研究課題の解明に不可欠な固有名と記憶に関わる研究を開始した。この研究の問いは、「固有名は人間の記憶とどのように関わるのか。固有名は集合的記憶にどのような影響を与えているのか」というものである。本研究は、ベンヤミンの初期言語論を主要な手がかりに、これらの問いに応えるものである。平成21年度の研究では、まず、ベンヤミン『言語一般および人間の言語について』の成立事情をゲルショム・ショーレムとベンヤミンによる書簡などの記録により明らかにした。次に、このテクストの構成を確認し、その上で、言語と名・名づけの関わりについて解明を進め、固有名の理論へと至り、最後にベンヤミン独自の「翻訳」概念について考察した。この研究により、固有名としての人間の名は、神の言語と人間の言語の中間的審級であり、誕生とともに受け取られた所与であるとともに、永続的な創造の源泉であることが明らかになった。また、これとともに、翻訳とは、神が人間に委託した通りに、人間が名なきものを名づけることであることが解明された。 なお、以上の研究成果を集合的記憶の解明につなげるためには、固有名に関する具体的経験を分析することが必要であり、平成21年度後半では平成22年度の研究に向けて、ベンヤミンのテクスト(『ベルリン年代記』、『1900年頃のベルリンの幼年時代』)を対象に地名(街路名)と人名に関わる経験の分析を行った。
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