2007 Fiscal Year Annual Research Report
歴史的歴史理論としての「グローバリゼーション」論の可能性の解明
Project/Area Number |
19520030
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鹿島 徹 Waseda University, 文学学術院, 教授 (10169419)
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Keywords | 歴史哲学 / 歴史理論 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
本研究は平成19年10月に採択され、それゆえ実質半年間の実績について以下報告することを最初に断っておきたい。 本研究の目的は、「グローバリゼーション」についての哲学的歴史理論の可能性を問うことにある。そのさいにはなによりも、各国・各地域ごとの「グローバリゼーション」経験の差異に着目し、さまざまな地域に足を運び、人々と交流し、実情を視察する方法を主として取る。 今年度はまず11月に中国・南京市を訪問し、南京事件70周年に関連する学術シンポジウムに参加するとともに、中国有数の大都市の発展を実見した。交流相手となったのは主に南京師範大学の学生であるが、街中のさまざまな地域を視察することにより、中国型「グローバリゼーション」における社会的格差の増大の様子を実地に見聞することができた。 続いて12月にはエジプト・カイロ市を訪問した。交流相手は、カイロ大学教員、現地人ガイド、高校教員、カイロ大学学生、そして彼らを通訳とした民間の人々である。一方では観光地として高度な発展を遂げながらも、他方で貧困としかいいようのない地域がカイロ市内にも数多くある。しかしながら、全体としてイスラムという宗教=生活原理が根強く影響を行使しているため、相互扶助の原理が働いて階層化された人々の生活のセイフティネットを形作っていること、民営化を中軸とした「新自由主義的グローバリゼーション」がこの地にはさほど浸透していないことを確認することができた。 「グローバリゼーション」には明らかに地理的不均衡発展という側面がある。上記の経験をもとに、David Harveyなどの研究を参照して、この点をさらに検討する必要の認識に到達した。
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