2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520031
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大須賀 史和 Yokohama National University, 教育人間科学部, 准教授 (30302897)
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Keywords | 人格 / 存在論 / ロシア |
Research Abstract |
本計画では、ロシア哲学に存在一般を人格的に理解しようとする「人格的存在論」と呼ぶべき傾向があることに着目している。今年度は昨年度に引き続き、ローセフの主著の一つ『名の哲学』における言語哲学的議論の分析を行い、言語を媒介とする対象認識とその対象の言語的かつ存在論的な再構築の構造がどのように理解されているかを考察した。 ローセフの言語論においては、言語的な認識を行う主体が対象を「認識された対象存在」として構成する構造の分析において、フッサール現象学に見られるエイドスやイデア概念などがやや独自のニュアンスをはらみつつ援用されると共に、この構造が単に静態的に直観されるだけでなく、動的・弁証法的な意味構造をはらむものとして捉えられている。その際には、「一」(単数性)と「多」(複数性)というカテゴリー的対立とその綜合としての「統一性」という綜合的カテゴリーが、対象そのものに看取されると共に、対象の言表という言語的再構成においても内包されることが生成=変化のダイナミズムの源泉となると考えられている。 こうして「理解された対象」が認識主体による対象の意識化作用を言語的表現として客体化され、コミュニケーションによって共有されることによって、この外部化された意識があたかも自立的、主体的な意識を持つかのようにして現前することによって、対象やその言語的表現が「人格性」と共に現出する経験を産み出されると考えられる。こうした対象との人格的関係性は単に対象の認識のみならず倫理的態度や美的態度のような領域をも含むはずであり、ローセフがそうした広範な関係性をも視野に入れた体系の構築を目指していたことを明らかにした。 以上の分析結果に基づき、7月にソフィアで開催された国際会議と国内の学会とで計2本の口頭報告を行った。
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Research Products
(3 results)