2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520032
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
長滝 祥司 Chukyo University, 国際教養学部, 教授 (40288436)
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Keywords | 身体 / 間主観性 / 一人称的観点 / 二人称的観点 / 三人称的観点 / 言語 |
Research Abstract |
本年度の主たる研究計画は、「現象学における他者論、間主観性の理論を言語発生という観点から再検討すること」と「言語発生の社会認知的基盤を認知科学的観点から明らかにすること」であったが、その土台となる問題として認知科学の三人称的研究と哲学的・現象学的研究の統合を特に意識して研究を進めた。他者を扱った現象学的議論としては、現象学の「間主観性」や「感情移入」、「間身体性」といった概念などがあるが、どれも一人称の私秘性を突き崩すには至ってはいないと見なされてきた。昨年は、言語発生の社会認知的基盤に関する基礎的研究を、現象学と発達心理学や霊長類学といった認知科学の知見を踏まえながら行った。本年度はこれを受け継ぐ形で研究を遂行した。社会認知的基盤を理解するばあい、三人称的観点だけでなく二人称的観点も問題になるが、後者を認知科学の客観的な成果のなかにいかに組み込んでいくかということがもっとも重要な問題になっている。そこで本年度は特に、意識の現象学の一人称的観点からの分析と認知科学の三人称的観点からの具体的研究のあいだにあるギャップを意識しつつ検討をおこなった。これに関しては、論文"Mind,embodiment,and second person perspective"および、「心を科学する方法について」で論じた。とくにそのなかで、言語報告と心的内容との相関だけでなく、二人称的な観点からの他者の心の内容についての報告の精度を問題とした。『心/脳の哲学』所収の論文では、大脳生理学の研究を視野に入れつつ、知覚的認識を自動化されたレベルと意識的なレベルにわけ、後者には言語による知覚の意味論的な固定という側面があることを明らかにした。
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