2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520032
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
長滝 祥司 Chukyo University, 国際教養学部, 教授 (40288436)
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Keywords | 身体 / 一人称的観点 / 二人称的観点 / 心の科学 / 言語 |
Research Abstract |
本研究計画の最終年度にあたる21年度では、現象学の身体論的言語論と認知意味論に欠けていた言語の発生に関する他者の関与という視点について探究を進める計画であった。また、特に言語発生を念頭に置きつつこれまで遂行してきた研究を総括し、現象学的研究と認知科学的研究を統合的に理解する方向で研究を行った。以上によって、言語発生のメカニズムに一定の見通しを与えることができたが、一方でこのメカニズムは身体的知覚の次元から言語的な次元へと抽象化される人間の認識の展開にも関わっていた。また、そのメカニズムに関連して、論文On the Methodology of the Science of Mindで、他者(被験者)の具体的な身体動作についての言語的記述(二人称的観点からの記述)と、脳の三人称的、客観的状態、被験者の一人称的報告との相関を明らかにするような実験パラダイムを提案した。ここで身体動作についての観察記述を二人称的とするのは、これが外部から観察されるものであるとはいえ、脳状態のような非人格的な事物を対象とするのではなく、人格を備えたコミュニケーション可能な他者を対象としているからである。この実験パラダイムの提案は、これまでにない方法論的な展望を認知科学にあたえるきっかけとなりうる。一方、哲学的には、認知科学の成果の理論的な方向付けを行うことによって、現象学的観点から満足のいく回答を与えることのできない間主観性の問題に対する指針が得られた。言語発生のさらなる探究については、身体動作についての一人称的記述と二人称的記述(他者の視点からの記述)を現象学的観点から分析することでさらに展開されることが予想されるが、今後の課題とする。
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