2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520043
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
鶴成 久章 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20294845)
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Keywords | 永楽三大全 / 四書大全 / 性理大全書 / 科挙 / 明代 |
Research Abstract |
本年度はまず『四書大全』の研究に従事し、『四書大全』には侃士毅撰『四書輯釈』以外に藍本と比定されるような経学著作は存在しないのか、あるいは、『四書輯釈』以外の宋元の経学著作はどの程度取り込まれているのかという問題について考察を行った。そして、この研究に見通しがたった段階で『性理大全書』の研究に取り掛かり、該書の巻一から巻二十五までについては、原典のどの部分を取りどの部分を省いたかという点を考察し、また、巻二十六以降については、誰のいかなる著作のどの部分を採録しているのかを考察した。それらによって得られた成果の一部は、『概説中国思想史』の第一部・第七章「明代」の内容に反映させた。また、「『四書大全』成立考(仮称)」と題する論文を執筆中であるほか、投稿中(出版時期未定)の論考が二篇ある。 さらに、本年度は当初の計画に従って「永楽三大全」の各種版本についての書誌学的な調査も行った。版本の悉皆調査はもとより不可能であるので、特に明版の『四書大全』に関する調査を重点的に行った。調査の結果、少なからぬ知見が得られたものの成果としてはいまだ不十分で、他の「大全」も加えて継続調査の必要がある。 なお、本研究の主な目的は「永楽三大全」の内容の考察であったが、それに加えて明永楽年間以降の東アジア儒教文化圏の学術・思想の特質に関わる諸問題にも随時研究を広げることを目指してきた。本年度は、その一環として、江戸時代の儒学者が「永楽三大全」をどのように受容したかという問題について基礎的な考察を行い、その成果の一部は国際会議の報告に反映させた。また、中国の研究者の協力を得て中国における「永楽三大全」の位置づけと日本における位置づけの相違についても比較考察を行った。この研究は今後も継続する予定である。
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