2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520048
|
Research Institution | Niihama National College of Technology |
Principal Investigator |
野田 善弘 Niihama National College of Technology, 一般教養科, 准教授 (80290815)
|
Keywords | 東南大学 / 柳詒徴 / 民国時代の諸子学 / 今古文論争 / 日遊彙編 / 明治日本の学術 / 嘉納治五郎 / 繆〓孫 |
Research Abstract |
本研究は、東南大学知識人の発展的研究として、東南大学の代表的知識人である柳詒徴の思想について研究することを目的としたものである。柳詒徴は、,民国期東南大学においてその学風形成に大きな影響を与えたが、その学術は当時において高い評価を得ることはなく、その思想について十分な検討がなされていない。しかしながら、柳詒徴は、同時代の学術的権威、胡適・梁啓超・章炳麟を批判するとともに、その独特なる見識を表明した。柳の主著は『中国文化史』であるが、筆者はそれ以前に発表された論文「近人諸子の学を講ずる者の失を論ず」(1921年)にその思想が明晰に示されていることに注目し、これを詳細に検討した。その中で、柳詒徴は、当時の今古文の争いに対して中立的な立場をとっていて、同時代人の評価(たとえば、周予同のように柳を古文家とする見方)を再考すべき必要に気づいた。 また、柳詒徴は、梁啓超の学術の中に日本の中国研究の影響を看取している。柳が明治日本の学術に深い造詣を有していたことは、その学友および門弟の発言から明らかであるが、柳と日本の学術との影響関係について、具体的に論じたものはほとんどない。筆者は、この点に関して考察を加えようと企図したが、結局は十分な結論を見いだすことはできなかった。しかしながら、柳詒徴は、その師繆〓孫が行った日本教育視察に随行し、その報告書というべき『日遊彙編』を編集している。筆者は、柳と日本とのかかわりを考える第一段階として、この『日遊彙編』の訳解を行った。『日遊彙編』は、柳詒徴の日本体験を考察するうえで重要であるだけでなく、清国人の日本に対する感情、さらには明治日本の教育状況、また嘉納治五郎の教育思想等を知るうえでも貴重な資料である。これをもとに、今後はさらに柳詒徴と明治日本の学術との関係について研究を深めていきたい。
|