2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520056
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Research Institution | Minobusan University |
Principal Investigator |
望月 海慧 Minobusan University, 仏教学部, 教授 (70319094)
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Keywords | チベット仏 / 大中観 / 他空説 / チョナン派 / トルプパ / 『宝性論釈善説陽光論』 / ターラナータ / 『大中観決択論』 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続きトルプパ・シェーラプ・ゲルツェンによるマイトレーヤの『宝性論』に対する注釈書を取り上げ、同註釈書の和訳を完成した。この如来蔵思想を代表する文献を彼がどのように註釈しているのかを解明することにより、大中観思想の思想的基盤としての如来蔵思想の影響が明らかになった。これは中観論書よりも、唯識思想の開祖とされるマイトレーヤの著者を多数引用する彼の思想的態度を補うものでもある。 続いて、同じチョナン派の学者であるターラナータ・クンガニンポ(1575-1640)の著作における大中観説・他空説について調査した。テキストとして、彼の『最乗詳説大中観論(Theg mchog shin tu rgyaspa'i dbu ma chen po)』の第1章と第2章を弟子のイェーシェ・ギャムツォによる註釈書とともに和訳解読した。それぞれの章のタイトルに、「空」、「所知」の語が付されているように、前者は空思想に対する彼独自の解釈があり、唯識思想の影響も見られた。また後者については、アビダルマ的解釈に基づくものであり、ターラナータの意図した大中観思想が、広くアビダルマ・唯識などのインド仏教全体を基盤とするものであり、大中観思想がそれらを融合したものであることが解明された。これらの態度は、トルプパに連なるものであり、本研究成果は、今後のチョナン派の大中観思想の系譜を確立する資料となりうるものである。
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Research Products
(4 results)