2007 Fiscal Year Annual Research Report
全体主義と批判理論-フランクフルト学派批判理論の新展開に向けて
Project/Area Number |
19520072
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高幤 秀知 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 教授 (00146995)
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Keywords | 批判理論 / 全体主義 / テクノ・ビューロクラシー / 限定否定 / 承認 |
Research Abstract |
本年度の中心的課題であった,フランクフルト大学社会研究所所長アクセル・ホネット教授の招聘事業については,残念ながら実現するに至らなかった。 昨年六月には高幤が訪独し,今年二月から三月にわたるはずの招聘事業について,同教授と懇談し,概略の同意と確約を得ていた。その後,日本国内の各研究者と討議の上,二月下旬から三月初旬にわたり,北海道大学・東北大学・南山大学・京都大学の順に講演研究集会を開く計画を確定し,準備を進めていたところ,二月初旬に,同教授が予期せぬ思い喘息の発作に見舞われ,さしあたり約二ケ月の間完全な休養状態に入らざるを得なくなり,その結果,われわれの計画は来年度に持ち越すことのやむなきに至った。来年度にはより完壁な準備態勢を整えた上で,成果ある事業としたい。 既発表の研究成果としては,中央公論新社刊『哲学の歴史』第10巻488ページ〜510ページ「ルカーチ」を挙げておく。現在,執筆中の論文『自己保存と批判の根拠』においては,アドルノ哲学の構想を次のように把握する。実在的自然の圧倒的威力が,分業と禁欲を介して,社会文化的強制連関として反照し,同一性思考へと固着される。しかし,この幻惑連関を突破すべく提起される限定否定,同一的ならざるものといった概念があまりにも認識的な次元に局限されているかぎり,「コミュニケーション的行為論」(ハバーマス)を越える「承認をめぐる闘争論」(ホネット)が実践的な次元に然るべく位置づけられなければならない,と。その他の所期の計画については漸次進行中である。
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