2008 Fiscal Year Annual Research Report
全体主義と批判理論--フランクフルト学派批判理論の新展開に向けて
Project/Area Number |
19520072
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高幣 秀知 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 教授 (00146995)
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Keywords | 全体主義 / 批判理論 / 存在論 / 弁証法 / 承認をめぐる闘争 |
Research Abstract |
『批判理論研究』の創刊にむけた作業が平成20年度のうちにかたちをとることができた第一の成果である。創刊号では、アドルノの「カント純粋理性批判・講義」のうち「啓蒙主義」の部分の翻訳、研究代表者・高幤の論説「批判理論の思想史的位置と意味-『啓蒙の弁証法』を照準にして」、そして他に論文2篇「マルクスの疎外批判と労働の弁証法-真なるものと主体をめぐって」、「自然美とはなにか-アドルノ『美の理論』を通して」を収録する予定であり、近日中に刊行する見通しである。 いまひとつ課題は『啓蒙の弁証法』読解を主題とする研究会の続行である。困難な出版事情のなかで、平凡社の編集者による確約が得られたことを報告する。 共同参画者は、細見和之(大阪府立大学)、龍村あや子(京都市立芸術大学)、上野成利(神戸大学)、麻生博之(東京経済大学)、古賀徹(九州大学)である。21年度中の完了、出版を期しているとことである。 また、国内出張の範囲では、平成20年3月駒沢大学で開催された国際ヘーゲル学会において、招へいされたA.ヘラー教授(ニューヨーク社会研究新学院)からインタヴユーにおいて重要な発言をひきだすことができた。要点を記せば、ルカーチとアドルノとのあいだに進められた和解への交渉が正968年、ブロッホの介入によって中断された、とのことである。これまでの情報・研究の範囲ではあきらかにされていなかった事実であり、現在の思想史研究において示唆するところが大きい歴史的証言である。 ホネット教授(フランクフルト大学)については、体調がひきつづき十全とはいえず、確約されていた日本招へいについては、延期せざる得ない状態にある。
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