2009 Fiscal Year Annual Research Report
全体主義と批判理論――フランクフルト学派批判理論の新展開に向けて
Project/Area Number |
19520072
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高幣 秀知 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 教授 (00146995)
|
Keywords | 全体主義 / 批判理論 / 社会文化的再生産 / ビューロクラシー / テクノクラシー |
Research Abstract |
全体主義が制覇した時代のうちでのアドルノの達成は、自然支配の暴力性の解明と同一性強制の解除への論理であった。戦後に続くハーバーマスの仕事とホネットによる展開は、それぞれコミュニケーション的行為論と承認論とによって、固有の意味での文化と社会へと問題を転位する、という特性をもつ。こうした経緯の反面は、ハーバーマスなどにおけるテクノロジー・テクノクラシー問題の欠落であり、アドルノなどにおけるデモクラシー・ビューロクラシー問題の脱落である。ビューロクラシーとテクノクラシーとの結合態が新たな全体主義的動向とどのように交錯するのか、ここに批判理論の新展開を期するとき究明されるべき課題の焦点がある。 1)ホネット教授の日本招聘については、立命館大学と明治大学の尽力により、2010年3月ひとまず実行されはしたが、そこでの討議はいまだ不十分な水準にとどまっている。同教授の理論を継承する次世代の研究者たちとの交流もふくめて、研究体制の継続が必要である。 2)アドルノ、ホルクハイマーの共著『啓蒙の弁証法』読解プロジェクトについては、平凡社編集者の回復をまって再始動すべく、共著者一同の研究体制を調整し続けているところである。 3)『批判理論研究』(北海道大学大学院文学研究科哲学講座・高幣研究室編)については、数次にわたる試行を経て、最終版を編集する途上にある。次世代の研究を担うべき研究者たちによる力編が寄稿され、最終的には百数十ページを越える充実した冊子となる見通しである。
|
Research Products
(1 results)