2008 Fiscal Year Annual Research Report
コペ・グループの思想史的研究:独仏交流による19世紀思想史
Project/Area Number |
19520075
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安藤 隆穂 Nagoya University, 大学院・経済学研究科, 教授 (00126830)
|
Keywords | 自由主義 / 公共圏 / 社会思想史 / ナポレオン帝国 / ロマン主義 / 道徳哲学 / フランス文学 / ドイツ文学 |
Research Abstract |
コペ・グループの19世紀大陸思想史での位置を確定するためには、文学史的視点からアプローチすることが重要であり、本年度は、これに集中した。コンスタン『政治文学雑論集』(1829年)とスタール夫人『ドイツ論』(1813年)および『フランス革命論』(1818年)を中心に、コペ・グループにおけるドイツ思想の流入とロマン主義の形成を考察し、シュレーゲル『演劇文学講義』(1814年)やシスモンディ『南欧文学論』(1813年)の分析を進める予定であった。まず、コンスタンの『政治文学雑文集』の成立事情から、これに至るコンスタンの思想の歩みを遡及する方法をとった。コンスタンのスタール夫人の文学についての批評を分析していくと、その批評の枠組みは、1810年前後に確立したことが分かり、この時期の文学論を集中的に検討した。コンスタンの文献考証について、執筆時期など、予想していたとはいえ、様々な困難に遭遇した。 この時期のコンスタンの文学論は、ボナルドなどとの文学と政治の自由をめぐる論争、ドイツ悲劇論とシラー劇のフランス語訳、小説『アドルフ』を貫く主題をめぐるものであり、しかも、その主題が、スミス『道徳感情論』を範例とする道徳哲学の可能性についてであることが、明らかになってきた。その問題は、スタール夫人の『ドイツ論』に共通するものであって、自由主義へのロマン主義の流入と、英仏思想にドイツ思想が合流する思想的交錯を示すものでもあるとみえてきた。そこで、回り道となるが、スミス『道徳感情論』の大陸への導入史をコンスタンのドイツ演劇論につなげる論理を再構成し、一端を公表した。文献調査は、日本でのスミス研究(大陸への導入史的研究)についての調査に集中し、海外調査は最終年度に持ち越した。
|