2009 Fiscal Year Annual Research Report
コペ・グループの思想史的研究:独仏交流による19世紀思想史
Project/Area Number |
19520075
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安藤 隆穂 Nagoya University, 経済学研究科, 教授 (00126830)
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Keywords | 社会思想史 / 公共性 / 自由主義 / コペグループ / アダム・スミス |
Research Abstract |
これまでの研究の総括を行った。まず、フランス自由主義がコペ・グループに流れ込む思想史的コンテクストの整理を行い、コンドルセ夫妻の影響が圧倒的であり、底流に夫妻独自のアダム・スミス受容があり、特に『道徳感情論』の大陸への受容過程があることを明らかにした。続いて、コペにおける、ドイツ思想とフランス思想の合流の様子を、シュレーゲルを通じてのスタールへの影響を『ドイツ論』の分析を中心に行った。この点では、さらに、シャルル・ド・ヴィレールによるカント哲学のスタールへの紹介が重要であることも視野に入れて行った。次に、コンスタンのドイツ文学論を中心に、コンスタンにおけるフランス思想とドイツ思想の合流を分析した。その中で、コンスタンが、『道徳感情論』をベースに、独仏思想の総合を試みていることが明らかとなってきた。とりわけ、スミスの道徳哲学のキイ概念である同感、観察者の概念を用い、ドイツとフランスの「公衆」の成立形態が異なることを、文学の独仏対比の問題を焦点として行っていることが示された。コンスタンのこの思想的作業は、コンドルセの自由主義の底流にあったスミスの道徳哲学の影響が、さらに屈折して浮上する中でドイツ思想に出会うというコンテクストを浮かび上がらせる。このコンテクスト上で、『国富論』の大陸への受容過程が読み直されるべきだし、また、大陸における自由主義が、各国別の思想潮流としてではなく、このコペ・グループのコンテクストを軸に、同一空間上で展開するのではないかという仮説を持つことができた。
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