2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520079
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山田 園子 Hiroshima University, 大学院・社会科学研究科, 教授 (10158199)
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Keywords | 寛容思想 / 主教制 / 国教会 / 非国教徒 / 復古体制危機 / ローマ・カトリック教 / エドワード・スティリングフリート / ジョン・ロック |
Research Abstract |
ジョン・ロックの「不寛容」論を検出するために、本年度は三つの作業を行ない成果を公開した。 第一に、『寛容論』から『寛容書簡』に至るまでのロックの寛容・不寛容思想の展開過程の背景を検討し、その成果を「ジョン・ロックと復古体制危機」(広島法学)で公開した。第二、ロックの論敵で国教会聖職者のE・スティリングフリートの文書を検討し、その成果を「エドワード・スティリングフリートの教会論(上・下)」(広島法学)で公開した。第三に、スティリングフリートに対するロックの手書き反論文書の解読、活字化、及び翻訳を行なった。これらにっいては、現在精度を高める作業を進め、21年夏には「13.備考」に記したWebページに掲載する。 これらの作業と成果により、従来のロック研究で強調されていたような非国教徒寛容及び政教分離の主張は、それ自体としては、ロックの反論文書に見出せないことが明確となった。ロックは「復古体制危機」という歴史状況において、ヨーロッパのカトリック大国に危機意識と反感をもちつつ、イングランド国家と教会の再編成を唱えた。スティリングフリートも同様の問題関心をもつが、「復古体制危機」を主教制国教会の再編・教化によって乗り越えようとする。スティリングフリートに対し、ロックは主教制存続を否定し、より包容的、かつ非国教徒の活動を「耐忍する」という意味での寛容な国教会を構想する。こうした国教会によって国民統合を図ることが、カトリック大国・教皇主義国に対抗するイングランドの強力な礎となる、とロックは確信していた。
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Research Products
(4 results)