2008 Fiscal Year Annual Research Report
「聖なるもの」と「文化」-世俗的モダニティの思想史的分析
Project/Area Number |
19520080
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鏑木 政彦 Kyushu University, 大学院・比較社会文化研究院, 准教授 (80336057)
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Keywords | 聖なるもの / 文化 / 政治と宗教 / 神話 / ベンヤミン / カッシーラー / ジンメル / ワイマール |
Research Abstract |
二年目にあたる本年は,当初(1)ヴァルター・ベンヤミンと,(2)彼に関連する思想家に焦点をあてるとともに,(3)「聖なるもの」と「文化」の言説が焦点化する「美的なもの」と「政治」との関係について,研究をすすめる構想をたてた。 まず(3)に関して,トクヴィル研究書への書評というかたちで,政治における想像力の意義について叙述した。想像力論は「聖なるもの」と「文化」を理解するための準備作業と位置づけられる。次に,(1)と(2)に関しては,「シンボルとアレゴリーの交叉-カッシーラーとベンヤミンにおける<神話・文化・政治>序説」と題する学会発表を行った。これは,(2)において予定した思想家よりもいっそうベンヤミンの神話論を際立たせることのできる思想家として,エルンスト・カッシーラーを選び,両者の神話論を比較しながら,モダニティにおける「聖なるもの」の顕現形態としての神話の解明を目指したものである。通常比較されることのない両思想家に共通するモチーフとして新カント派批判を引き出し,二人の神話論がそれらのモチーフの展開であることを明らかにした。(2)に関してはさらにカッシーラーとジンメルにおける文化論を比較して,モダニティにおける「文化」の経験の諸相を明らかにするとともに(「カッシーラーとジンメル-文化の葛藤と架橋」),両者の思想を導きとして,(3)の「美的なもの」と「政治」との関係を追究した(「個・全体・<型>-ジンメルとカッシーラーを手がかりに」)。以上の,世俗化がもたらした生活世界の経験の変化が思想的に表現されている言説の分析は,「聖なるもの」と「文化」に関する言説として現れた近代社会の特質を明らかにする試みであり,思想史的には,第一次世界大戦後のドイツ思想が抱えた問題性をさらに深く究明するために,また文化哲学・政治哲学としては,美的なものが有する政治的な意義を解明するために,大きな意味をもつと考えられる。
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Research Products
(4 results)